第3回十字軍7-英雄サラディンの憂鬱

イスラムは、といえば、誰もなしえなかったエルサレムを陥落させた英雄サラディン万歳・・・と思いきや、そうでもなかったのだ。要するに寛大すぎると。サラディンが、エルサレムから脱出させちゃったおかげで、逃げた騎士は、まだ残っている十字軍の城に立て篭もり、攻略が難しくなったと。残念ながら人間とはそういうものだ。そしてティロス攻略に失敗する。

1188年、2度と歯向かわぬと誓ったギー王を彼は釈放する。まあ私が部下なら「嘘にきまってまっせ」と忠告する、事実そうなった。エルサレムを脱出した騎士に、喪服を着させてローマへ行かせ、「イスラムにキリスト教徒は虐待された」とデマ宣伝をさせた。まあ今もこういうことはうかつに信じちゃいかんよ。よくあるけどね。

ということで、何も知らないキリスト教国からは、十字軍を待つまでもなく、続々と援軍が押し寄せた、目標はアッコ。サラディンは、アッコ防衛に駆けつけるが、勝っても勝っても援軍が海から到着する。何かまるでシリア戦争のISみたいだね。そして、さすがに連戦が続き、士気は落ちるわ、金はなくなるわ。

極めつけに、サラディンの勢いを怖れたバグダードから使者が来て「エルサレム征服で、勝手にカリフの名を使った」との非難が行われた。心の広いサラディンは、怒りをぐっとこらえ、冷静に弁明した。しかし日本で言えば天皇から非難されたサラディンは、求心力を序々になくしていく、サラディンも疲れてきたのかもしれない。

下はアッコの戦い

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。