第3回十字軍2-赤髭帝と聖女の「死の予言」

この時代、中世最高の賢女が誕生している、近年とみに評価の高いビンゲンの聖ヒルデガルトである。生誕は1098年、十字軍エルサレム制圧の1年前。5歳のときには、牛のお腹の中の子牛がわかり、8歳で「魂がぐらつくほどの強い光」を見てそれから予言ができるようになった。

身体の弱い彼女は小さな修道院に入り40歳で院長になるが、43歳のとき、啓示を受け、「神の口」となって幻視したことを書き写した。この著作「道を知れ」は、大司教を通じてローマに伝わり、1147年トリーアでの教会会議で、彼女自身から読みあげられた。そこに居たのが当時のカリスマ、シトー会の聖ベルナルドゥスで、彼に絶賛されたことで評価が高まり、おまけに彼女は大ファンの彼と文通することになった。

彼女にはビンゲンに大きな修道院が与えられ、秘書もつけられて、さまざまな活動が可能となった。彼女には有力者から助言の求めが相次ぐようになる。そして1152年に来訪したのが、何と皇帝になったばかりのフリードリヒ1世!その時彼女は、皇帝の治世を祝福した。そして帝の庇護のもと、彼女は薬草学や作曲などマルチタレントぶりを示すのだ。

彼女の世界は、神と人間が結びあった美しい中世の世界観を表現している。「人間は天からの力、緑の生命の力で働いている」と述べる。天の力と人間の自然の力の調和である。しかしバルバロッサが対立教皇を立てたとき彼女はこう手紙に書くのである「ああ皇帝よ心せよ、もしも悔い改めねば、私の剣がお前を貫くだろう」それから起こる事態で、彼女は預言者として高名になってしまった。

下は聖ヒルデガルドのトラマ「Vision」よりヒルデガルドとバルバロッサ

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。