ロマン派の時代50-ルートヴィヒ2世と邂逅

トリスタンとイゾルデをミュンヘン宮廷劇場で上演させたのは、あの有名な狂王とも白鳥王とも称されるルートヴィヒ2世である。彼はその前年の64年に父の死でバイエルン王に即位した、その時18歳。もともとゲルマン神話や中世物語にふけるヲタクであり、彼が即位するややったことはワグナーを呼び寄せることだった。

ワグナーはその頃、コジマとマティルデのダブル不倫をやらかして、さらに贅沢な私生活で多額の借金をかかえていた。バイエルン王は、この借金をすべて肩代わりしてやっただけでなく、多額の年金を与え、さらに一等地に豪華な邸宅を与えた。楽劇の初演は「神のごとき作品」と感涙した。

王はワグナーの構想通り、バイロイトに超大作「ニーベルングの指輪」を上演するワグナーだけの祝祭劇場を建設しようとする。それでなくとも出費を快く思わない官僚達は反対。ところがワグナーはまた悪いクセが出て、内閣改造案まで出して政治を乗っ取ろうとしたのである。

結局首相は王に向かって「国民を取るかワグナーを取るか」と最後通牒を突きつけ、65年末にまたしてもワグナーは追放された。ルートヴィヒ2世はそれから欧州の激動の中でますます自分の夢の世界にふけるようになり、あのシンデレラ城の元祖であるノイシュバンシュタイン城を建設する。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。