近代思想16-何をなすべきか

1863年、チェルヌイシェフスキーの小説「何をなすべきか」が発刊され、ロシア先進的青年の中でおおいに読まれた。同氏は、アレクサンドル2世の大改革期に生きた知識人で、皇帝の不徹底な農奴改革を批判し、農民には無料で土地を手渡すことを主張した。またロシアの農業共同体ミールを社会主義を生むものと考えた。

「何をなすべきか」は、当時のロシアに生きる青年を主人公にして、男女平等や協同経営など革命的進歩主義者の理想を示した。この本を読んだロシアの現状に飽き足らない進歩的青年達は「ヴ・ナロード(人民の中へ)」を合言葉に、農村に出て行った。彼らをナロードニキと呼ぶ。

彼らは医師や教師となったり、協同農場をつくったりして農民と触れ、その貧しい実態を理解した。しかし彼らを反政府に立ち上がらせることは非常に困難だった。農民達は改革してくれた皇帝を崇めていたからだ。そして不審者として訴えられれば容赦なく秘密警察が弾圧した。

彼らは大衆活動に絶望し、秘密結社「人民の意志」が結成された。彼らはテロリズムによって騒動を起こし、体制が転覆されうるものであることを示そうとする。とりわけ皇帝に対しては神ではなく、死ぬ普通の人間ということを実証しようと、皇帝暗殺を企てるようになっていく。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。