近代アジアの動乱14-千歳丸上海へ

1862年、幕府の千歳丸が上海に派遣された。鎖国によって中国渡航も禁止されており、日本人が中国に正式に渡ったのは2世紀ぶりである。一行はまず上海の繁栄ぶりに驚いた、上海は南京条約で西洋に開港しており、西洋貿易の中心だった。外国船はもとより、中国帆船も多く停泊していた。

しかし彼らが租界を出て、一般中国人居住区に行くと、その違いに唖然とする。当時は太平天国の乱の中であり、多くの江南の難民が上海に押し寄せ、町は混乱の極にあった。道路は糞尿で汚れ、水も汚い、清潔な日本から来た彼らの目には、それが一層コントラストをなした。

中国人でも繁栄しているのは皆外国とつるんでいる者ばかり、清朝は力がなく、何と孔子廟が外国軍の駐屯地になっている。今まで儒学を学んだのは何だったのか、世界観が一変した、そして日本の将来への危機意識が生まれたのは不思議ではない。一行の中の高杉晋作は日本防衛の意識を強くした。

高杉は中国人が奴隷のようになっていると書くが、実際奴隷を解放した欧州列強は、今度は中国人を苦力として欧州で奴隷同様な状況で働かせていた。そしてアメリカでも、南北戦争後の労働力不足で、中国人苦力を大量に必要となる。奴隷解放は実際はこんなところだった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。