ロマン派の時代44-皇帝とヴェルディ

イタリア統一の動向が問題となるなかで、ヴェルディは2つの予言的なオペラを書き上げる。一つは1857年の「シモン・ボッカネグラ」これは近世の華やかなジェノヴァ共和国の物語である。この頃のイタリア先進都市では、平民派と貴族派が対立していた。シモンは元海賊だが、平民派に押されて統領になる。

しかし死なせてしまった恋人は貴族の娘、2人の一人娘の恋人は貴族派、この政治的対立に巻き込まれて、シモンは和解を提案すると、平民派から疎まれる。シモン何と娘の恋人から毒を盛られるが、その死をもって和解する。最高傑作オテロにつながる対立と和解の音楽が劇的で美しい。

59年に上演したのが「仮面舞踏会」。このオペラはスウェーデンのグスタフ3世が仮面舞踏会の最中に暗殺されたことを題材にしたのだが、何と58年にナポレオン3世暗殺事件が起こってしまう。上演予定だったナポリでは、暗殺を書き換えてくれと依頼されたがそれをするとすべてダメになる。

仮面舞踏会は結局、舞台を植民地時代のアメリカに切り替えてローマで上演されたが、まあ誰もそんなことは関係ないだろう。物語は部下で親友の奥さんと独裁者が恋仲になってしまったことで暗殺劇となる。オペラは皮肉にもナポレオン3世の戯画になり、イタリア民衆はヴェルディを讃えた。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。