ロマン派の時代38-ワグナーのユダヤ人攻撃

チューリヒへ亡命したワグナーは、ヴェーゼンドンク夫人マティルデの庇護のもとで、ヒマにあかして論文を書く。1849年の「芸術と革命」においては、現代の音楽は金によって支配されていると述べ、芸術の革命が必要だと述べる。自分も金で養ってもらってるのにどの口が言うのかということだが。

「未来における芸術作品」はフォイエルバッハの影響を受け、人間が個別にあるように、芸術も分野ごとに分かれてしまっている。フォイエルバッハが、愛で結ばれて類的存在として解放されるように、音楽も総合芸術として一つになって解放されねばならないという、これが「楽劇」の概念である。

そして「音楽におけるユダヤ性」では、金と欲望の権化としてユダヤ人があげられ、その象徴としてユダヤ人音楽家メンデルスゾーンを批判する。さらに風貌が醜いとか、発音まで悪く、こんな民族が芸術を創造できるとはとても思えないとまでエゲツなく攻撃した。

中世以来差別されたユダヤ人だが、資本主義の時代がくるとロスチャイルドのようにのし上がった者も居た。当時のドイツ民族主義の勃興の中で、ドイツ圏の中のユダヤ人が異端視されてしまうのだ。しかしユダヤ人は実際は音楽的にも優れ、偉大な音楽家を輩出するのだが、やれやれ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。