第1回十字軍8-大混乱民衆十字軍の悲劇

ところが十字軍は最初からイレギュラー発進。正規十字軍が準備中に1096年4月、「民衆十字軍」が出発しちゃうのだ。このアジテーターが隠者ピエール、公会議後、粗末な姿で熱狂的なアジテーションを行い、貧者に施し、喧嘩の仲裁をやり民衆から聖者として崇拝され、数千人がケルンから出発し、各地の総数4万人にのぼった。

火がついた民衆の宗教心はそれほど強かったが、武装したプロはほとんど居ない。そしてこの熱狂は「国内に居る異教徒=ユダヤ人」に向けられ、ケルンだけでなく各地でユダヤ人虐殺が行われた。ユダヤ人は巷間では「キリストを殺した者」とされ、長年差別されてきた。

出発はしたものの、食糧もすぐ尽き、ハンガリーでも略奪を行い、コンスタンチノープルまでで1万人が脱落。ビザンティン皇帝は来た「十字軍」を見てびっくら仰天!言うことをきかないので、仕方なく海峡を渡らせると、彼らはトルコ半島に行って勝手に略奪を始めたのだ。

セルジュークのスルタンもまたこの大集団に「なんじゃこりゃ?」と思っていたが、この虐殺を見て怒り、兵士に攻撃を命じたから、烏合の衆はどうしようもない。民衆十字軍は、エルサレムへ到着する前に姿を消してしまったのである。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。