ロマン派の時代25-ヴェルディ「ナブッコ」

音楽先進国だったイタリアは、その地位をすっかりウィーンやパリに奪われてしまった。オペラ作曲家のロッシーニをはじめベッリーニ、ドニゼッティも皆パリへ移住する。未だに統一もできず、統一マーケットができないイタリアでは、しょうがないといえばしょうがないのである。

そこへ新星が現れる、ジュゼッペ・ヴェルディ、彼は1842年のミラノのスカラ座にかけたオペラ「ナブッコ」で一気にスターダムにのしあがる。しかしそれまでの彼はミラノを追い出され、2本のオペラを失敗、おまけに妻子を病気で失うというついてないどん底の男だったのだ。

なんとこのオペラたるやユダヤ人がバビロンに連れ去られたというこれもどん底の時代をテーマにしたオペラだった。強引に引き受けさせられたヴェルディだが、ここで目についたのがユダヤ人達が故郷を思って歌う合唱「行け我が思いよ黄金の翼に乗って」である。ヴェルディは自分の思いを乗せて書き上げた。

なんとナブッコは大当たりを取った。とりわけ「黄金の翼に乗って」という歌が観衆の心を掴んだ。観衆はオーストリアの支配のもとにあるイタリアをその歌に見たのである。かくしてこの歌は、イタリア統一を求める歌となり、第二次大戦を経て、現在では第二の国歌といわれるほどになっている。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。