カノッサの道12-英国王とアンセルムスの戦い

この時代、イングランドでも聖職叙任権で王と戦った聖人が居る、カンタベリーの聖アンセルムスである。彼は1033年ブングルド王国のアオスタで誕生した。敬虔な母の影響で神の道を目指すが、父は許さず、一時期非行に走ったが、その後とうとう家出をする。

3年間の放浪の後、ノートルダムのル・べック修道院に入る。三年後には副院長に選出され、78年院長となり、師の影響のもとに、信仰と理性の合一をめざし、後年「スコラ学の父」といわれる、論理を研究し、彼の「神の存在証明」は大きな影響を神学に与えた。

1089年、カンタベリー大司教となっていた師ランフランクスの逝去で、英王ウィリアム2世は、カンタベリーの資産を没収し、教会を王権のもとに置いた。アンセルムスは推薦を受け、英国に赴き、大司教となったが、王と対立を繰り返し、とうとう97年、ローマ行きで英国を離れた際、追放されてしまった。

その後、彼はヴァチカンの仕事をし、著作を著し、1100年英王の崩御で、後継者ヘンリー1世に呼び戻された。が、叙任権を離さない王と再度対立して、再度追放。そして07年ついに王は屈服し、叙任権を放棄することで大司教復帰、ヴァチカンの権威は、イングランドに届くこととなった。

下はカンタベリー大聖堂の聖アンセルムス像

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。