カノッサの道11-教皇の暴走を止め得た男

グレゴリウス7世は頑固で強硬な姿勢がかえって反発を招いたきらいがあるが、彼を止められた唯一の男と言われる人がいる。教皇の朋輩だった聖ペトルス・ダミアニヌス教会博士である。教皇より10歳年上ながら、修道院時代にヒルデブラントと友達となり、共に改革をめざした。

ペトルスは貧乏貴族の子供で、豚飼いとして酷使された後教育を受けた。25歳にもなるとラヴェンナで著名な教授となったが、フォンテ・アヴェッラーで鞭打ちを含む厳しい戒律を立て、モンテカッシーノに取り入れられるほどの声望を博し、修道院は繁栄した。

聖職者の堕落を批判した「ゴモラの書」などで有名となり、1057年枢機卿に任命され、ヒルデブラントと一緒になった。彼は交渉担当者として各地へ派遣されたが、ヒルデブラントよりも穏健であり、ミラノに派遣されたときは、厳粛な誓いを要求するも、悔悛した者はすべて復帰させている。

ハインリヒ4世は強制結婚だったため頑固な彼は離婚しようとしたが、このときペトルスが行き、夫婦仲を良くした。しかし運命のいたずらか、ヒルデブラントが教皇になる前年に逝去し、ペトルスの死で、皇帝と全面対決になったのである。神学原理の著書もあり、「哲学が神学の侍女」と最初に言ったのは実は彼である。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。