ロマン派の時代8-バイオリンの悪魔パガニーニ

さて、この時代のヴィルトゥオーゾといえば、ヴァイオリンの奇才パガニーニを忘れることはできない。もともとヴァイオリンは、プロテスタントに「悪魔の楽器」と呼ばれるほど、精神をかき乱すことから悪魔に縁がある。タルティーニも夢の中で悪魔が弾いた旋律を書き留めて「悪魔のトリル」をつくったという。

パガニーニの母も、子供が悪魔と演奏比べをしている夢を見た。彼はそのことを売りにして、実際エキゾチックな美貌と悪魔のように鮮烈で高度なテクニックを売り物にしてのしあがった。作曲もしているが、自分のみが弾くため、出版はせず、オーケストラに渡した楽譜は演奏後回収した。

そして1828年46歳でウィーンで演奏してセンセーショナルを巻き起こし、ヨーロッパ各地で演奏した。シューベルトは少ない全財産を売り払ってこの演奏を聴いた。リストは衝撃を受け、ピアノのパガニーニになることを決意したとのことだ。シュトラウスもショパンも影響を受けた。

パガニーニの演奏は、民衆の音楽として出発したロマン派が、人間の感情を複雑に表現し、ゆり動かす音楽に変わっていくことに貢献したのである。しかし彼はもともと身体が弱く、女性や賭博にも溺れて亡くなった。教会は悪魔との関係の噂で埋葬をいやがり、死後36年も墓が建てられなかった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。