1827年、シューベルト歌曲の代表作「冬の旅」が出版された。「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」の作詞者として知られるヴィルヘルム・ミュラーは、実は政治批判的な詩も書いて、検閲のチェックを受けていた。この「冬の旅」は失恋した若者の絶望的な旅の詩だが、ミュラーの時世への絶望感が反映されていると、F・ディスカウは分析している。
シューベルトも、健康を害しており、その影響を指摘する専門家もいる。そして同年、尊敬するベートーヴェンが亡くなったことが、シューベルトの死への想いを強くした。葬儀参列の後の打ち上げで彼は「この中で一番早く死ぬ奴に乾杯」という音頭をとった。
シューベルトの音楽の根底には、現実からロマン主義的な夢、童話の世界への脱出がある。確かに冬の旅の主人公は現実から脱出しようとしている。がその夢もわずかの間で中断されてまた厳しい冬の現実に直面し、またそこからも立ち去ろうとするとカラスが鳴く。
冬の旅」の演奏を聴いた友人達はあまりの暗さに絶句したという。そしてその翌年28年11月19日、31歳という若さでシューベルトは貧困のうちに亡くなった。彼の短い生涯で作った歌曲は600を越える。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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