苦悩と歓喜14-スペイン混乱ゴヤ「黒い絵」

デル・リエゴらの軍の反乱は思いもかけぬ支持を集め、スペイン各地に内乱が勃発、マドリードでも軍が蜂起し、バリェステロス将軍が3月7日に王宮を包囲し、国王フェルディナンド7世は、立憲派を容認し、1812年憲法の復活を認めた。立憲革命は成功して進歩派が政府を構成した。

しかし、フェルディナンド7世は、アランフェスに移り、密かに王党派やイエズス会を使って、反革命の陰謀を行った。スペインは進歩派と王党派に分かれ分断された。祖国の混乱で、ラテンアメリカはさらに独立がすすみ、とうとうメキシコでも進歩派と保守派が手を組んで独立革命が起こった。

この騒乱を、マドリードの一角で見ながら黙々と絵を描いていた者がいる、画家ゴヤである。彼は19年に宮廷画家を引退して「聾者の家」と呼ばれる家に隠居した。彼の難聴もひどくなっていた。そしてその家を出ずに描いたのが「黒い絵」と呼ばれる14点である。

彼はこの頃大病を患った。そこで見た黒のイメージでこの絵を描くのだ、彼の人間界への遺書として。彼は啓蒙主義者だったが、啓蒙主義を実現しようとしたこの時代は暴力と対立と非理性が支配した。砂の中で死ぬまで戦う二人を描き、「サンイシドーロ巡礼」に描かれた三角帽子はナポレオンとも言われている。

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キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。