チェコでは、モラヴィア王国滅亡後、新たにボヘミア王国が誕生した。ハインリヒ1世のころ統治していたのが、有名な聖ヴァーツラフ1世。彼は祖母聖ルドミラに育てられ、キリスト教信仰に深く影響を受けた。ところが祖母は、彼の母で摂政の手にかかり暗殺された、ちょうど彼が14歳で王位につく921年。
ヴァーツラフは、母を追放し、国のキリスト教化をすすめ、ドイツから宣教師を呼び、ザクセン地方で崇敬されていた聖ヴィートの聖遺物を譲り受けて、聖ヴィート大聖堂を造った。929年にハインリヒ1世に臣従し、対外的地位を安定させて、いっそう国内統治に尽力した。
しかし王のカトリック政策とフランク臣従政策に不満のある勢力が弟のボレスラフ1世を擁立し、935年に王を自分の領地に招きよせて、そこで暗殺した。享年なんと28歳の若さである。ボヘミアは、その後も神聖ローマの影響を大きく受け、栄光と没落の歴史を描く。
ヴァーツラフ1世は、死後も崇敬され、それはドイツにまで広がった。民族の危機には眠っている騎士たちと一緒に蘇ってチェコを守るという伝説が伝えられ、近代には民族の象徴、英雄として芸術作品がつくられて、独立したときは彼の名前が連呼された。命日の9月29日はチェコの祝日となっている。
下はプラハにあるヴァーツラフ広場に立つ王の騎馬像
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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