神聖ローマ5-マジャールを討伐した聖槍

鳥獣王ハインリヒ1世の難題は新たにハンガリー盆地を占拠した遊牧民マジャール人だった、915年にはブレーメンまで侵攻されて略奪を重ねた。ハインリヒ1世は、マジャール人と928年に、9年間の休戦協定を一旦結んで時を稼いだ。その間マジャール人にならって騎兵を強化、マイセンに強固な砦を築く。

鳥獣王は、さらにスラブへ遠征して928年にブランデンブルクをザクセン公国に併合、翌年ボヘミアに東フランクの総主権を認めさせた。そして国力を充実させた王は、933年全諸侯連合軍を率いて対マジャール遠征を行う。実はワグナーの歌劇「ローエングリン」第一幕に出て来るのがこのシーン。

王はリアデの戦いにおいて、マジャール軍を撃破した。そのときにブングルト王国に伝わった「聖槍=ロンギヌスの槍」をかざしたといわれている。この槍は、歴代神聖ローマ皇帝に伝えられ、現在ウィーンに展示されている。なおこの聖槍もワグナーが「パルジファル」で使っている。

ハインリヒ1世は、ドイツの団結を固め、長子相続を定めて領土の分割を防いだ。ドイツ王権の基礎を築いた王といえる。そしてマジャール撃破を見たヴァチカンが「こりゃ使えるワイ」と思うのである。長子オットーを後継者に指名し、936年大好きな狩りの途中、脳卒中で崩御した、本望といえるかもしれない。

下左はリアデの戦いで勝利するハインリヒ1世。右はウィーンホーフブルグ宮殿に保管されている聖槍

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。