近代とキリスト教4-アルスの司祭ヴィアネー

1815年「アルスの司祭」として尊敬されることになるヴィアネー神父は司祭に叙階された。彼は平民の生まれで、ラテン語もろくに読めなかったが、革命のあと聖職者不足だったのだ。その3年後、32歳になったヴィアネーは、リヨンの北の田舎アルスに赴任した。ここも革命の影響で荒れ果てていた。

赴任したとき「ここに入りきらぬほどの人がやってくる」と彼の心に啓示があったという。彼は聖フランチェスコのように教会を修繕し、余分な家具は皆貧者に与え、自分は粗末な身なりでマットレスに寝た。司祭はエライ人だと思っていた村人はびっくりだった。やがて思い出した人がミサにやってくる。

そして彼の超能力が開花した。コミュニケーション能力がすごいのだ。人の心を読み、適切なアドバイスをする。夫が自殺したことで悩んでいた夫人は、言う前から「安心しなさい、自殺した夫は救われましたよ」と言われた。地方一帯に噂が広がり、司祭は一日に10時間も告解をきくようになったという。

面白いことに司祭はいつも悪魔の誘惑を受けていて、何回も司祭を辞めてひきこもるよう言われていた。しかし出発しようとすると村人に泣いて止められた。ナポレオン3世からレジオン・ドヌールを受け、1859年73歳で帰天した。最後の言葉は「来世がなくったって私は十分幸せだった」。1924年に彼は列聖された。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。