そもそもイスラムに言わせれば、神が現世に現れたというイエスその人が偶像である。だから聖像を崇敬するかどうかなど枝葉末節の問題だという。まさしく、神が受肉したということが他のセム氏一神教と区別されるキリスト教最大の特徴である。そしてこの聖像問題は現代まで通じるミステリーがある。
イエスキリストの顔はだいたい似通っているが、これは東ローマのイコンがモデルとなっており、イコンはまさに聖なるもので、厳密に形式が決まっている。イコンの確立期は6世紀だが、この時期、シリアにあるエデッサでイエスの顔の写った「マンディリオン」なる布が発見されたという。
エウセビオスの伝承では、イエスがこの世に居た頃のエデッサ王が癩病にかかり、イエスに来てもらうようお願いしたという。しかしイエスは処刑されてしまい、エデッサ王へは、イエスの顔が写った布が届けられ、王の癩病は治り、マンディリオンは聖遺物として城壁に掲げられたがその後保管された。
マンディリオンは6世紀に発見以降、イスラムの占領から、東ローマが奪回した944年8月16日、厳粛な儀式と共にコンスタンティノープルに移転した記録がある。それが欧州の貴族にも見せられ画家が写したというわけだ。そしてマンディリオンはコンスタンティノープルを襲った1204年の第4回十字軍のとき行方不明となった。1358年トリノの聖骸布がフランスで発見され、1898年に写真を撮ったところ、そのネガにイエスとおぼしき顔が浮かびあがったのだ。
下は最新研究結果として聖骸布に着いた血に拷問の痕跡があったという記事
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント