カール大帝のイスラムとの戦いを描いた勇壮な叙事詩「ローランの歌」だが、内容たるやほとんど血しぶき飛び散る修羅場の戦場。「三国志」のほうがはるかにストーリーがあるよ。その中でひときわ異彩を放つのがランス大司教テュルバン。坊主のくせに強いのなんの。多勢に無勢の戦況で、ローランを守って獅子奮迅!
しかしさしものテュルバンも、確かオリヴィエが絶対絶命のところに救出にかけつけて矛4本に刺し貫かれる。ところがすっくと立ち上がり、側のローランに「私は負けたりはしない。真の勇士は降参などせぬものだ」と言い放って最期の闘いへ。
しかも戦いもさることながら、最後の力を振り絞って、死んだ戦友たちの遺骸に十字を切って、自分の仕事、罪業の消滅を祈っていく。さらに気絶したロランに水を持って行こうとして後ろから刺され、それでもローランのもとにたどりつき、角笛を渡して息絶えるという漢の死にざま。
実はこの大司教のモデルが居るらしい。アキテーヌの聖ギョーム。彼は、カール・マルテルの孫で、アキテーヌ公としてカール大帝に仕え、スペイン遠征ではおおいに武勲を立てたとのことだ。また801年にはカールの息子、ルイと一緒にバルセロナの攻略に成功、後に修道院を建立して自身も僧となった。この戦う僧侶伝説が形成され、ついに十字軍で「修道騎士団」なるものができるのである。
下はアキテーヌの聖ギョーム
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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