ナポレオン54-教皇ピウス7世復活

フォンテンブロー城に幽閉されていた教皇ピウス7世は、5月24日再びローマに民衆の歓呼の声で帰還した。ウィーン会議で革命以前の正統主義を復活させようとしていたヨーロッパ諸王は、最後までナポレオンに屈さなかった教皇を高く評価し、教皇の役割を確認した。

今に至る精神的指導者としての教皇はこのときにできたのかもしれない。それ以後教皇の地位は高まり、プロテスタントのプロイセンやロシアとの政教和約(コンコルダート)の締結を行うなど、外交を展開して影響力を高めた。各国とも安全保障としてこれに応じた。

教皇幽閉後、ナポレオンもまた自分を神格化しようとして聖ナポレオンの日をつくり、さらに幼年教育である公共要理に皇帝への忠誠を入れて幼年心理にすり込もうとした。しかし現実を支配しようとする神=皇帝は現実の戦争に負けてその永遠となる夢を断たれた。

ナポレオンの夢は露と消えたかに見えた。ところが彼は、この後追放され、回顧録によって新たなフランスの聖人として生まれ変わるのだから不思議なものである。新たな宗教や聖人をつくろうとしたフランス革命はある意味ナポレオンによって実現されるのは歴史の綾というものだろうか

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。