苦悩と歓喜6-ゴヤ「カルロス4世一家」

ナポレオンは大陸封鎖令を完璧に実行しようとする。まだナポレオンに従っていない、スウェーデンにロシアを差し向け、ポルトガルに侵攻しようと計画した。当時のスペイン王カルロス4世は無能で、王妃マリア・ルイサと宰相マヌエル・デ・ゴドイに政治を一任していた。そしてゴドイは親仏路線をとった。

1801年に当時の宮廷画家フランシス・デ・ゴヤが描いた「カルロス4世一家の肖像」は、史上最も悲惨な集団肖像という評価を得ている。ゴヤは一同に会せなかったので、別々に描いてそれを絵の中で合わせたらしい。が、この集団の不調和さは異常である。主人公のはずの王は、まるで威厳がない。

そして中央に居るのが王妃マリア・ルイサ。いかにも強気で、口を真一文字に結んでいる。その背景の絵は「ロトとその娘達」旧約聖書では、ロトの娘2人は、父を酔わせて、性的関係を持つ。実は王妃には宰相ゴドイとの不倫が疑われ、王子はその子との噂もある。

左奥に画家を入れることでは、ヴェラスケスの傑作「ラスメニーナス」を意識しているのだが、何と違うことだろう。ナポレオンはゴドイとポルトガル3分割で合意して、スペインに兵を侵攻させるが、この半島戦争はゴドイと王の没落を導き、ナポレオンも泥沼に引き込まれることになる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。