黒人奴隷7-イギリス「奴隷貿易廃止法」

1807年のイギリスでは、世界初の「奴隷貿易廃止法」が成立した。奴隷廃止のリーダーウィリアム・ウィルバーフォースは、1789年に議会で奴隷貿易反対演説を行っている。仲間のトマス・クラークソンは、奴隷船での人道に反する黒人の扱いについて詳細な調査を行っていた。

91年に提出した最初の議案は、しかし88対163票であっさり否決された。その背景には、フランスとの戦争で国力を下げることはできないという国家主義的論理があった。しかし彼らは、宗教的理由があり、あくなく廃止運動を展開し、議会に議案を提出し続けた。

19世紀に入り、ハイチ革命の影響はイギリスにも伝わり、奴隷貿易が野蛮であるという思想が通るようになった。また普通選挙運動も、奴隷貿易反対に加担した。そして1807年3月25日、奴隷貿易に反対していたグレンヴィル内閣のもとで、ようやく長年の悲願であった奴隷貿易禁止法が成立した。

ナポレオンは、奴隷制度を復活させており、イギリスはナポレオン戦争において道徳的優位に立つことができ、大陸の啓蒙主義者を引き寄せた。しかしこの法律は罰則が緩く、奴隷貿易はまだ続いた。奴隷制度廃止法ができるのは、ウィルバーフォールが亡くなる1833年である。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。