ナポレオン28-アングル玉座のナポレオン

1806年「玉座のナポレオン」という絵が、サロン・ド・パリに出品された。描いたのは当時26歳のドミニク・アングルである。同じ展覧会で、ルフェーブルの「戴冠衣装のナポレオンの肖像」も展示されたのだから、この皇帝の皇帝戴冠を描いて、お買い上げいただこうというのがブームだったのだ。

それまでのナポレオン絵画の権威ダヴィッドは、この絵を辛辣に批判した、そりゃそうだ本人のナポレオンの戴冠式の絵はまだ完成したいなかったんだもの。アングルは実はダヴィッドのアトリエに入門していた。弟子なら師にもっと敬意を払って遠慮しろというのか。

アングルは、イタリア絵画に学び、その調和を画風に取り入れた。ナポレオンがイタリア戦争で取ってきたイタリア絵画は、ルーブル美術館に展示されており、自由に見ることができたのだ。それにしても、真正面から描く皇帝の姿は、もはや人間を越えた神々しさを感じる。

アングルは、この絵の不評に気落ちして、イタリアに向かう。そこで特にラファエロに影響されて、新古典派の代表者となってゆく。1820年から始め、1856年に完成した代表作「泉」もやはり正面画である。この絵も女性という理想像を具象化した作品である。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。