このケルソスの鋭いつっこみに対して、オリゲネスの反論もなかなかのものであり、双方の特徴を際立たせている。まず、神の受肉については、ギリシャ・ローマ神話にもあるではないか、と。まったくヘラクレスなど、ゼウスはよく人間に子供を生ませている。そしてこちらは神話ではなく、マジで最近の話よ、と。
そして、イエスは反乱者などとんでもない。イエスもキリスト者も反乱を咎め、皇帝に従って、皆より清く正しい生活をしているではないかと。これはその通りで、ギリシャ哲学者達も、キリスト教徒の生活の正しさは皆認めざるを得ないのだ。
その上で、オリゲネスは述べる。そもそも哲学者は口舌の徒にすぎない、と。裕福な貴族が少数でああだこうだと言ってるだけだ。君達のやってることといえば、貴族達の家庭教師したり、弁論のための弁論を教えてるだけではないかね。と。実際それがその頃の哲学者の実態だった。
キリストは下層の民のためにやってきた。多数の下層の民がキリスト教で正しい生活に目覚めている。乱脈で怠惰な生活をしている貴族達、口だけで実行が伴わない哲学者達、キリスト教が人々を捉えていった理由がここにある。
下はティントレット作「天の川の始まり」神の子ヘラクレスを不死の子にしようとゼウスはヘラの乳を飲ませようとするが強く噛みすぎて失敗。飛び散った乳が天の川(ミルキーウェイ)になったという。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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