恐怖政治5-国家総動員令

8月23日、もはやかまっていられない革命政府は「国家総動員令」を発して、強制的徴兵を行った。ルイ14世のフランス軍も、大軍とはいえ、給与制である。戦争の規模が拡大したとはいえ、しょせん王家の戦いで、金と人に期限がある。ところが近代的徴兵制は、低コストで大量の兵を集めることができる。

ところが、それをするには思想洗脳をしなければならない。このときに行われたのは、負ければ各国が押し寄せ、子供達は殺され、国民は奴隷にされるという宣伝だった。国民を思想動員することで、これ以後の戦争はさらに大規模になり、国を賭けて争う事態になってゆく。

中世に「十字軍」があったが、近代的戦争はそれをバカにできない。実は、革命戦争の最初から、フランス革命を戦争によって各地に広げてまわるという「革命十字軍」的な発想はできていたのだ。そして実際、この後ナポレオンによって、この発想は実現することになるのである。

それだけではない。大工場も国営化されて大砲や銃弾を作った。教会の鐘も溶かされて大砲になったというからどこぞの国は寺の鐘を供出したのと変わりはしない。サン・ジュストは「正義によって支配できないものは、鉄によって支配しなければならない」と言った、国王でもそんなことは言わなかった。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。