仏王処刑26-フランス血統原理絶える

フランス王朝はユーグ・カペー以来、脈々と受け継がれ、さらにその源流は、カール大帝、フランク王国創始者クローヴィスにまで遡る。国王即位のときには、クローヴィスと同じくランス大聖堂で、クローヴィスの聖油の塗油を受ける。シャルル7世もジャンヌ・ダルクに助けられて聖油を受け王を証明した。

王の血統の原理は、カトリックの聖性と結びついて強められた。ユグノー戦争を経て、ブルボン絶対王制はそれを極限まで進めたといえる。すべての正義の源泉は国王、フランスに染み付いたこの原理を覆すために、王の血統そのものを断ち切るという極端な行為をしてしまうのだ。

ロベスピエールは、この処刑は「生まれ来る共和国を強固ならしめる」もので「ルイが死んで、祖国が生き延びる」と考えていた。ロベスピエールの夢想は、血統だけでなく、さらにキリスト教にも向き、共和国の新しい宗教をもつくろうとこれからしていくのだ。

しかし残念ながら、絶対の正義の原理を失った革命は彷徨い、正義の名のもとに、多くの血を流していくことになる。フランソワ・フュレは、フランスに民主主義的共和国という新しい原理が浸透するまで、一世紀かかったという年表をつくっている。ルイ本人が国の犠牲と言ったことはある意味当たっているかもしれない。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。