アマデウスの旅27-最後の傑作「レクイエム」

「魔笛」の好調ではしゃいでいたモーツァルトは、妻をバーデンに迎えに行ったのだが、身体の不調を訴え、レクイエムを完成できない、自分は毒を盛られたのではないか、と言い出す。サリエリ犯人説はここから出てくる。11月20日には寝込んで立ち上がれなくなる。現代の説によれば連鎖球菌性咽頭炎からの合併症とのことだ。

1791年12月6日、35歳の若さでこの不世出の天才は夭折した。最後の作「レクイエム」はモーツァルトの指示を受けていた弟子のジュスマイヤーが完成させて、1793年12月14日依頼主のヴァルゼック伯爵によって初演された。

レクイエムは死者のミサで演奏される音楽で、歴史は古い。本格的にはルネサンスから作曲され、バロック時代には声楽に器楽演奏が付けられて次第に大きくなる。アマデウスの前にもヨハン・クリスチャン・バッハなどが作曲している。静かでバロック的な曲である。

しかしアマデウスの作はまるで異にしている。何よりもその悲劇的壮大さである。彼の作品は長調を使い、美しいものが多いが、これは全体短調で、魔笛の明るさの後にこの音楽を創ったのかと思うと、その懐の深さが思い知らされる。アマデウスは宗教音楽から出発したが、最後にそれに戻ったといえる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。