さて「魔笛」である。このオペラは音楽におけるフランス革命の表現とも言われる。確かにテーマは夜の女王の絶対支配する世界から、民衆が暮らす昼の世界への変革である。オペラの最後はこれまでのように調和で終わらず、夜の女王は逃げ出し、朝が到来する。
主役のタミーノは誰にも属していない。が、女王の3人の侍女に最初からカッコいいと言われるヒーローである。恋人のパミーノを救い出す冒険をして、世界を取り戻すまるでアニメの世界。この試練はフリーメーソンの入会の試練。つまり自立して啓蒙された個人が新しい世界を救うのである。
さらに鳥刺しパパゲーノの民衆の世界がある。彼は女王に従属して日々の生活を営んでいるが、タミーノを助けて自分も恋人を探し当てて自由になる。旧世界、新世界を創るヒーロー、そして民衆の世界が、童話のような世界を借りながらも、混然一体となった音楽世界を創るのが魔笛の魅力なのだ。
ヒーローっぽいタミーノだけでなく最高難度の夜の女王、親近感のもてる面白いパパゲーノ、重厚なザラストロのアリア、さらに重唱や冒険が加わり、貴族ではなく、民衆の見やすいファンタジーを創造した。それは現代のディズニーや日本のアニメにまで続くファンタジー世界なのだ。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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