ところで、プラハのオペラ初演に旅立つ直前、見知らぬ男がやってきて、モーツァルトに50ダカートという高額の作曲依頼をした。この男は鼠色の服を着て、背が高く不気味な感じだったということだ。これで、アマデウスの死後、死神の依頼という伝説が飛び交った。実際彼はこの頃精神的不安定だった。
この依頼主は、フランツ・フォン・ヴァルゼック伯爵だとわかっている(映画のようにサリエリではない)。しかしプラハから帰還したアマデウスが書いたという手紙が話を面白くする。彼はこの男を目の前から追い払えないというのである。そして死を予感し、これは私の葬送の歌だとまで言う。
実は、この手紙のオリジナルは残されておらず、全文イタリア語で、話を面白くするための贋作だとの疑いも強い。しかし1791年9月28日、遂にオペラ「魔笛」が完成し、30日に初演が行われた。初めの評価はそれほどでもなかったが、シカネーダの執念や演出で日に日に評価は高まった。
アマデウスの手紙では、魔笛を悦んで陽気なムードであり、皆と連れ添ってオペラに通う。まさしく「魔笛」によってモーツァルトの音楽は新しい革新を達成したのである。そしてこの2カ月後に亡くなってしまうのだから、後世に話が盛り上がるのも無理はない、実際モーツァルト人気はこうしたことで起こったのだ。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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