1788年モーツァルトは彼の器楽最高傑作といえる交響曲39、40、41番(ジュピター)を6月から8月にかけて一気に書き上げた。驚くべきことに、今日最高の評価を得ているこの3曲は、生前一度も演奏されなかった。アマデウスが三曲を作った動機というのは死因と共にいまだに多くの説があるミステリーである。
大指揮者アーノンクールは、この3曲は一体であって、「器楽のオラトリオ」を創るという壮大な試みだったと解釈している。確かに調和から徐々に盛り上がっていく39番、いきなり短調で速く始まる40番を経て壮大な41番の世界に至るとすれば、ベートーヴェンが第9番でやったことをアマデウスもやったと言えるだろう。
しかしこれだけの大曲にもかかわらず、初演の記録が残っていない。実は当時のコンサートのメインは、女性歌手のアリアやピアノ演奏で、交響曲というのは、疲れのない最初に聴かせる程度のものだった。音だけで世界を構成していくのは、ベートーヴェン以後ようやくできてくる。
しかしこの頃からアマデウスの借金の申し入れが増えていくのである。ウィーンで演奏されたドン・ジョヴァンニも難しすぎて不評だった。後期のレンブラントのように、自分の世界と世間の常識が離れすぎてしまったのだろうか?フリーメイソンのために使ったとも言われ、これもミステリーの一つである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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