アマデウスの旅20-カサノヴァ,リアル色事師

ドン・ジョヴァンニは元々17世紀スペインの戯曲「セヴィリアの色事師と石の客」が原作で、黄金期スペイン宮廷を批判した架空の物語。しかしこの時代、欧州にかけて著名であり、このオペラにも影響を与えた実在の人物に触れなければいけない。ジャコモ・カサノヴァである。

カサノヴァは、1725年平民としてヴェネツィアで生まれ、神学他哲学、化学、法学、薬学をパドヴァ大学で学び、優秀な学生となった。ここで貴族をパトロンに持った彼は、欧州大都市を放浪し、山師として世間を騒がせ、同時に多くの女性と関係を持ち、浮名を流した。

この時代は、啓蒙主義が流行し、知識があれば人気を集め、平民がのしあがることも可能だった。キリスト教倫理は形骸化して、結婚しながら愛人を求めることができた。何ものにも囚われず、己れの欲望に忠実な人間ができても不思議はない。そしてカサノヴァもドン・ジョヴァンニも、女性を幸せにしていると言い切るのだ。

実はカサノヴァはダ・ポンテと懇意でモーツァルトも面識があり、オペラの初演に臨席している。「首飾り事件」でも、カリオストロなどの山師が活躍した。身分制度と道徳が壊れる時代、この後にはさらに破天荒な人物が活躍する。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。