アマデウスの旅19-自由万歳ドン・ジョヴァンニ

1787年10月29日プラハ国立劇場でドン・ジョヴァンニが初演され、大好評を博した。11月4日までモーツァルト自身の指揮で4回も上演されたというからほぼ毎日である。放蕩な貴族が思うさまにして最後は地獄に落とされるという物語は、市民にとってハプスブルクの末路を思ったろう、つまりフランス革命である。

第1幕の最後にパーティでドン・ジョヴァンニが音頭を取り「自由万歳!」と歌うシーンがある。初演では歌手達が12回も繰り返したらしい。ドイツ文学はこの頃すでに「疾風怒濤」の時代に入っていた。文化が時代の雰囲気を先取りするのはよくあることである。ドン・ジョバンニで言えばもう地獄のフタは開いている。

プラハの評判を聞き、皇帝も上演を許可し、翌88年5月7日にドン・ジョヴァンニが初演された。ところが歌える歌手がなく、歌い手に合わせて改変された。さらに「自由万歳」も削除された。皇帝はこのオペラが難しいとの評判を聞き、実際に見たのは15回目の最後の上演だった。

ドン・ジョヴァンニは、89年にドレスデンなどでも上演されたが評判が良くなく、ウィーンでも上演されなかった。フィガロにも増してこのオペラは早すぎた。しかしアマデウスは皇王室宮廷作曲家の地位を得た。この役職は舞踏会音楽の作曲だった。ところが彼の音楽はさらに突っ走るのである。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。