アマデウスの旅11-司教と別れウィーンへ

1780年半ばの頃、ザルツブルクのアマデウス・モーツァルトは戦争でバイエルン選帝侯になったカール・テオドールから翌81年の謝肉祭用のオペラを受注した。宮仕えの彼は大司教の許しをもらって、11月5日にミュンヘンに赴く。これがモーツァルトの悲劇「イドメネオ」である。近来このオペラはモーツァルトの傑作と見直されている。

ストーリーはギリシア伝説から取ったオペラセリアだが、音楽はもうそこを越えている。まず壮大な管弦楽で奏でられる序曲、そして音楽が統一性をもって切れ目なく動いていく。さらにフランスオペラから取り入れたバレエも入れ、クライマックスの音楽は悲劇的壮大さ満載である。

オペラの初演は81年1月29日に行われ、2月と3月に再演が行われた。しかしアマデウスの休暇はとっくに切れていたのである。そんなとき、くだんの大司教からウィーンにお呼びがかかった。ウィーンのお歴々に音楽を聴かせてやるためだった。アマデウスはチャンスとウィーンへ行く。

しかし、彼の身分は司教配下の演奏者である。招待を受けてもお伺いを立てねばならない。ついにアマデウスはブチ切れ、5月9日に大司教と大喧嘩をしてしまう。大司教からは「この小僧」とか「ごろつきの横着もの」と言われたらしい。そして翌日、アマデウスはザルツブルクを辞職してウィーンで自立する、25歳。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。