アマデウスの旅10-帰郷と初めての失恋

アマデウスがパリを発ったのは1778年9月である。幸か不幸か、その後のアメリカ独立から革命までの騒ぎに巻き込まれずに済んだ。もしパリに居たら「アメリカ」とか「革命」とかを作曲しただろうか?しかし遅かれ早かれ時代の流れは到達し、彼はもっとドラマチックな音楽を作ることになるのだが。

当時のパリのグルック・ピッチンニ論争には飽き飽きしていた。まるでエンタメではないか。アマデウスに言わせれば「どちらも古い」。アマデウスは、グルックのようにアリアよりも音楽の一貫性だと考えていたが、登場人物の個性が音楽に解消されるとは考えない。彼のオペラでは、音楽の統一性をもちつつ、登場人物は皆個性を発揮する、驚くべきことである。

父は就職に失敗した息子に、ザルツブルクに復職の口をもってきた。ところが息子は、拘束が多いザルツブルクは好きでなく、いろいろ条件をつける。そして、帰り道にストラスブールやマンハイムに寄る。

さらにまあミュンヘンで年を越す。そこにはアマデウスが思いを寄せるアロイジア・ウェーバーが居た。彼はパリ在住時につくったアリアを彼女に捧げた。ところが彼女からひじ鉄を食らう、初めての失恋。「僕の心は泣きだしそうなのです」と彼は手紙に書いた。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。