1755年、「人間不平等起源論」というラディカルな著作が飛び出す。書いたのは、ジャン・ジャック・ルソー、ディジョンのアカデミーが、「不平等の起源は何か」というテーマで出した懸賞論文である。ルソーは今でこそ有名だが、他の文化人と違い、アカデミックな就学はしていない。
彼は1712年にジュネーブの時計職人の子として生まれたが、10歳の頃、父が没落しで故郷を追われ、孤児同様の境遇となった。彼はそれからも苦労し、職を転々とし、結局ヴァランス夫人の愛人となって、そこで本格的な学問を独学し、42年にパリ社交界デビューを飾ったというわけだ。
「人間不平等起源論」は、人間の「自然状態」の未開人には、知能がなく、不平等はなかった、と論じる。人間の知能が発達し、社会を持つと不平等が生まれ、それは所有権と為政者が生まれてそれが守られて、固定されたというわけである。不平等は自然だが、固定されて格差が拡大されると自然ではない、と。
この理論の裏付けは、今に至るも完全にはされていない。が、平等が本来の在り方だという理論はたいへんラディカルだった。ルソーは、ここで啓蒙主義文人として認められ、彼の思想はフランス革命は、おろかマルクス=エンゲルスに至るまで、大きな影響をもつことになる。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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