大王対女帝17-同盟転換「外交革命」

墺仏露三国同盟は、あくまで秘密だった。しかし密書が三国の間を往復する。ウィーンとペテルスブルクは遠い。その中継地ドレスデンは、ベルリンに近い。ここの墺大使館のヴァイデンガルデンは、買収されてスパイになっており、この密書を写して普王フルードリヒにご注進した。

プロイセン包囲網は着々と進んでいた。1755年サンクトペテルブルク協約で、ジョージ2世のハノーファーが攻撃された場合、ロシアがプロイセンを攻撃することを取り決め、ロシアはハノーファー防衛を名目で兵を移動させる。大王はさすがに慌てるのである。

プロイセンは、イギリスに接近し、56年1月16日、英普中立条約が交わされ、ハノーファーを攻撃しないことを約束した。もうここに至ると、秘密を公にする時間である。プロイセンがイギリスと接近したことで、フランスもプロイセンに義理はないと、同年5月1日、ヴェルサイユ条約で墺仏同盟がお披露目された。

昨日の敵は今日の味方、この同盟は欧州の長年の地政学を変える「外交革命」と呼ばれる。さらにザクセン、スウェーデンまでオーストリア側についていた。マリア・テレジアの外交力恐るべし。哲人王フリードリヒ2世は、またもや自分は平和を願うのにそれも叶わぬと思うのである。

下はヴェルサイユ条約記念メダル

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。