啓蒙の光7-モリエール最高傑作「人間嫌い」

モリエールは不思議な男である。あれほど人間を観察し、政治を知っていてもそのご機嫌をとろうとしない。喜劇でそんな風潮を笑い飛ばそうとする。ともかく宗教界からの批判は、国王の庇護下に入ることで切り抜けたが、あまり過激なものは書けないということも意味していた。

彼と同じ時代の劇作家にラシーヌがいた。ラシーヌは詩の規則を守った美しい悲劇をつくった。ところが、モリエールはラシーヌに出し抜かれて、看板女優を引き抜かれる。

1665年末からモリエールは心労が重なって病態となる。そしてその中で生まれたのがフランス古典劇の傑作「人間嫌い」である。この主人公は、当時の人にへつらう風潮がことごとく気に入らない。恋する女性は違うと思いきや、実はやはりうわべだけだったと知って、世間に背を向けるというドラマである。

この劇のテーマは近代的自我であったが、観衆は従来の喜劇を欲した。モリエールはその後も国王劇団で劇を書いたが、ルイ14世の興味も他に移り、73年病いを押して出た舞台で亡くなった。彼を評価したのは次の世紀の啓蒙文化人である。

下はコメディフランセーズの映画「人間嫌い」現代舞台のほうがピッタリくる

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。