啓蒙の光5-モリエール「ドン・ジュアン」

この頃モリエールは夫婦関係がうまくいかず、胸を病んで苦しんでいた。タルチュフが上演禁止に追い込まれたうっぷんを晴らすように、さらに過激な作「ドン・ジュアン」をつくる。ドン・ジュアンとはフェリペ2世時代の風刺でスペインの作家がつくった架空の人物である。

この物語は、銅像が動き出したり、地獄落ちの場面があったり、スぺクタル要素があるので、イタリアでオペラになり、イタリア劇団のフランス興行でヒットした。原作は、黄金時代のスペインの堕落を批判するものだったが、イタリアで喜劇になった。

彼のつくったドン・ジュアンは、快楽追求者であり、信仰深い森の隠者をバカにする。平気で嘘をつき、必要なら偽善者となる。これはその時代の貴族や聖職者の戯画であり、最後に地獄落ちするが、それまで不道徳な大暴れをする。1665年2月15日に上演されたドン・ジュアンは大当たりをとった。

こんな作に宗教界が黙っているわけはない。またもや上演禁止運動が起こり、劇はわずか15回で上演禁止になり、出版もさせてくれなかった。しかしこの劇は、モーツァルトと組んだ劇作家ロレンツォ・ダ・ポンテが知り、オペラとして不滅の命を持ち、最近ではタカラヅカも上演するミュージカルにもなった。

下は原作に忠実な1998年の映画ペネロペ・クルスやエマニュエル・ベアールも出演している

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。