フランスが美の国などと言われるのはもっと後代で、この頃はイタリア、スペイン、ネーデルランドの後塵を拝している。絵画の黄金時代といわれるバロックで、フランスが「威信をかけて」探し出してきた画家が「蝋燭の画家」ジョルジュ・ラ・トゥールである。
ラトゥールは20世紀まで忘れられ、作品は60点ほどしか確認されておらず、生涯は謎である。しかしルイ13世の「国王付画家」であり、評価はされていた。さらに彼の作品が不明になったのは、ロレーヌ公国に居たこともかかわっている。公国は神聖ローマだったが、30年戦争中フランスが侵入、その後も係争の地だった。
ラトゥールのバロックの光も内面を照らす。それも蝋燭の乏しい光だが、赤系の温かさがある。不安な時代に人々が集まり、祈る光だろうか。彼は「いかさま師」で、人間の罪をも描く画家でもある。
彼は少年イエスと養父ヨセフの絵を2枚描いている。彼には息子が居り、その成長を祈るような気持ちで見守る姿が最高傑作「大工ヨセフ」に表れている。残念ながら1652年、この地方を襲ったペストによって、妻、子をなくし、そして自らも亡くなったとされている。
下左は「大工ヨセフ」右は「悔い改めるマグダラのマリア」
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント