バロックの時代20-ヴェラスケス独自の道へ

絵画の王ルーベンスの死にさらに直接的な影響を受けたのはスペインのヴェラスケスである。フェリペ4世は、別荘の狩猟休憩塔の増改築を行い、1636年以降ここに何と113点ものルーベンス作品を展示することにした。「愛の園」や「三美神」など、野外を描いた神話画を続々と展示したのである。

対してスペインの画家ヴェラスケスの作品は11点、実に評価の差が歴然と現れている。しかしヴェラスケスは同じテーマで全く対照的な作品を描く。特に目立つのは、軍神マルス、なんとまあ肉体的にヨレヨレで、戦に疲れ果て、鎧も脱いでよっこらしょと腰を下ろす姿である。

王家の狩猟姿も実に写実的である、が神話画に劣らぬ高貴さを醸し出している。まるでこの人達には派手な天使は必要ないとも言っているようだ。そしてある意味、ルーベンスの描く神々の絵をすべて装飾的背景にしてしまっているともいえるのである。

そしてここにもまた障害者や道化画を登場させる。この塔自身が王家の休息がテーマであったので、この絵はその意向に沿っている。しかし実に神々と障害者という対極のテーマをぶつける。絵画の王に対してのヴェラスケスの立場をなぞらえたのかもしれないが、ルーベンスの死は絵画を変えていくのである。

下右はルーベンスの「軍神マルスと巫女レア・シルヴィア(部分)」左はヴェラスケスの「マルス」


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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。