日本宣教46-ハビアン背教の書「破堤宇子」

日本人キリシタンとしてリーダー的存在だった不干斎ハビアンだが、1608年44歳で驚くべきことに女性修道請願者と共に逐電し、イエズス会を脱会してしまうのだ。まあ女性のためというのは欧州でもそんなに珍しくはない。イエズス会は厳しい戒律だったせいもある。

その後、あちこち放浪した彼は、18年から長崎でキリシタン取締りのアドバイザーになり、19年江戸で将軍秀忠と会見、20年キリスト教批判書「破堤宇子」を執筆、ここに至って背教者となった。キリシタン迫害は厳しさを増し殉教者が出る中、キリシタンは邪教だという理論書としては絶好だった。

内容としては今更感がぬぐえない。聖書の創造の記述が神話そっくりとか、三位一体がおかしいとか、ローマ時代から言われていたことで、前著「妙貞問答」の逆焼き直しである。なぜそのときにわかっていなかったのか、彼は出世主義者でしかなかったのか?

彼は前著とは逆に、在来日本宗教にも絶対性があり、キリスト教だけが絶対というのは間違い、という。彼が日本在来の宗教相対主義に還ってしまったのは確かだと思われる。遠藤周作も彼を知っており、「沈黙」はその影響を受けているようだ。沈黙の登場人物に日本は「沼」と言わせて物議をかもしたが。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。