1580年、後世に大きな影響を与える書が発刊された。ミシェル・ド・モンテーニュの「エセー」である。モンテーニュは、フランス法官となり、フランスの人文主義者と交流をもち、37歳で遺産を相続としてボルドー地方の故郷の城に帰り、そこで執筆を始めるのである。
「エセー」は「随想録」と訳される通り、自分の率直な考えを書きしるした書であるが、常識に対する懐疑主義に満ちている。自分が落馬して気絶したときの経験を顧みて、魂の存在の検討をしている節もある。「私自身よりも大きな怪物は見たことがない」
世はまさに宗教戦争の時代、彼は王の侍従武官となり、ボルドー市長にもなる名士でありカトリックだったが、内面的には当時の宗教に疑いを持ち、古典的教養も使いながらひたすら自分の確固たる立ち位置を求めていたと言っていい。そして彼には王ばかりでなく、王母カトリーヌ、新教派のナヴァール王アンリ、さらには王妃マルゴまで助言を求めるようになる。
この書は死後まで書きつづられ、一時カトリックから発禁扱いを受けたが、宗教抜きに自己を反省しながら考える思考は、その後大きな影響を与え、デカルトの哲学に結実する流れをつくるのである。
下はエセーを執筆した塔と肖像画
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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