近世の混乱4-娼婦ヴェロニカとマグダレナ

1575年一冊の詩集が発行された。書いたのはヴェロニカ・フランコ高級娼婦(コルティジャーナ)である。彼女は離婚されて、娼婦として生きることを選んだ。イタリアでは当時高級娼婦は上流階級の間で普通の存在だった。大司教になったピッコロミーニは自由恋愛のすすめを書いている。

そして彼女達は自分の礼拝堂さえ持つようになった。その守護がマグダラのマリアである。マグダレーナは、聖書ではイエスに7つの悪霊を追い出してもらった女として、復活の証人となる。ところがグレゴリウス1世は、福音書に出て来る印象深いマリアという名の罪の女を皆マグダレーナにしてしまった。

結婚していない女性が生きるのは困難で、娼婦か修道女しかなかった。マグダレナはイエス昇天後、南仏に行きサント・ボームの洞窟で悔悛の日々を送り、ついには昇天したという伝説がある。彼女は悔悛のモデルとなり、娼婦のみならず大聖女達も崇敬の対象にしている。

画家達はマグダレナだけはヌードを描くことが許された。聖母に収まらない女性達をすべて面倒みたのがマグダレナである。詩人ヴェロニカは、仏王アンリ3世とも交際し、詩集の収入は、娼婦やその子供達のために使った。宗教裁判も退け、貧しいままで亡くなったが、マグダレナは救ってくれただろう。

下は邦名「娼婦ヴェロニカ」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。