1566年7月18日、スペインのアトチャ修道院でラス・カサスは死去した。カルロス1世からフェリペ2世に王が代わっても、アメリカ先住民の権利を擁護し、例えキリスト教に改宗しても、先住民が自分で認めないスペインの征服は不当であると考えるに至った。
しかしフェリペ2世になって、植民者達が先住民奴隷の世襲を求め、現地聖職者達もなし崩し的に追認するようになった。ラス・カサスは最後まで、先住民に賠償をしない者は終油の秘跡を認められない、と主張した。そしてこの征服はスペインの罪であり、神の怒りが国に落ちるのを恐れよと言った。
彼の畢生の作である「インディアス史」は40年間公開を自身が禁止した。スペインでは異端審問が浸透しており、禁書とされることを恐れた。彼は聖書のみならず、キケロやアリストテレスを用いて先住民の権利を主張し、ルネサンス人文主義者として普遍的人権までたどりついたのである。
最期の時期でも、彼は新教皇ピウス5世に征服の不当性を訴えたが、その中には自分が神に与えられた仕事ができなかったため罰が下るのを恐れる、と記されている。彼の遺書には、思慮分別を備え博学を自称する人が、罪深く不正な行為を認識していない、と述べられているが、今日まで通じる言葉である。
下はラス・カサスの死。インディオの天使が迎えに来るのは正当だろう
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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