インディオの使徒9-教皇インディオ人間宣言撤回

「なぬ?メキシコに聖母が降臨されただと?んなアホな」しかし教皇パウルス3世は動揺を隠すことができなかった。当時ヴァチカンでは相変わらず先住民にキリスト教を受け入れる能力があるかどうかの論争をやっていたのである。そこにメキシコ教会会議の手紙が届く。

ラス・カサスは、ニカラグァからグァテマラにまわり、先住民への虐待防止と平和的改宗の努力をしていた。1536年秋、彼はメキシコシティでの教会会議に出席、その途中アステカのピラミッドを見て感激し、彼らの文明の水準を讃えた。

メキシコ教会会議は、国王、皇帝、教会も先住民を奴隷にすることはできない、というラス・カサスの決議を採択した。そしてその決議を持って、同じドミニコ会士ベルナルディーノ・デ・ミナーヤが本国に帰った。彼はトラスカラ司教の同様の手紙を携え、王妃イザベルの紹介状を手にヴァチカンへ向う。

ローマに着いたミナーヤは、教皇パウルス3世に書状を提出し、現地の状況を細かく報告、教皇は聖母の声に聞こえたろう。37年6月2日ついに教皇は「先住民が真の人間である」という大勅書を発布。ミナーヤはこれをすぐ新大陸へ送った。ところが勅書はインディアス司教会議にかかり、ミナーヤは何と逮捕され、そして教皇は勅書を撤回してしまった、彼の耳に「ヘタレ!」という女性の声が聞こえたか定かでない。

下左はティツァーノ作パウルス3世右はインディオ大勅書

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。