我ここに立つ22-ルターの予定説

檄文事件でお尋ね者となったカルヴァンはフランス各地を転々としてからスイスのヴァーゼルに落ち着いた。そしてここで、仏王フランソワ1世の「誤解」を解こうとして献じられた書が、思想史に大きな影響を与える「キリスト教要綱」である。

この書は1536年に出版されたときは小さな本であったが、その後改定や加筆されて1590年には4編60章の大著となった。初版で書かれたのは主に新教の原則の擁護である。しかしその後、カルヴァンの思想は独自に発展することとなり、この書はプロテスタントの「神学大全」となる。

カルヴァンの思想の特徴は「予定説」である。ルターも人間の救いは初めから定められている、と考えていた。しかしルターの考えでは、誰が救われるかは人間にはわからない。では何をするか?信仰をもち神に頼み、真面目に仕事をする。商売はお互いに必要な者を与え合う愛の行為だからである。

しかし、真面目に仕事しているからと安心はできない。ルターの考えでは人間はあくまで罪びとである。何をしようがいつも自分の罪を思い、へりくだらなければならない。救われると思っている者は救われない。ある意味ネガティブな不安を生きるのである。

下はルターとカルヴァンのステンドグラス

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。