帝国対王国18-ルイ12世嫡男なく崩御

大災害の起こった後でなら予兆があったという声が聞こえてくる。1514年、確かにヨーロッパを揺り動かす地震の予兆はある。しかし王達は、あいかわらず欧州の駆け引きに忙しいのだ。皇帝マクシミリアン1世は、アラゴンに居る孫フェルディナンド公爵と英王ヘンリー8世の妹メアリーを結婚させようとした。

ところが神聖ローマとイングランド、スペインが同盟するのを嫌う仏王ルイ12世はここで思いきった手を打った。なんとメアリーを自分の嫁にするというのである。この年1月14日、仏王妃アンヌ・ド・ブルターニュが逝去した。恐るべき仏王、嫁の死まで政略の道具とした。

ルイ12世には嫡男が居なかった。嫡男が生まれればフランス王にする、との約束にひかれ、18歳のメアリーは、52歳の仏王に嫁ぐこととなった。もちろんルイ12世は最後の力を振り絞って嫡男誕生に賭けるつもりだったかもしれない。ともかくこの一石二鳥戦略によって、フランス包囲網は崩壊した。

ところが無理はするものではない。若い王妃に合わせて、狩猟や宴会を催したのがたたったか、結婚後わずか3カ月でルイ12世は崩御するのである。そして王位は、娘婿フランソワが継いだ。ルイ12世は、前王以上に策略に長けた王だったが、なぜかいつも詰め間際に失敗してしまう。ヨーロッパとはそういうものかもしれない。

下はルイ12世とメアリの結婚のタピストリー

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。