万能の人18-ダ・ヴィンチの世界の終末図

「アンギアリの戦い」を完成させず、フィレンツェを離れてミラノに行ったダ・ヴィンチはフィレンツェから契約不履行で、金を返せと言われたが、ダ・ヴィンチはもちろん払わなかった。ミラノでは、第2作目の「岩窟の聖母」他、フランス人総督ダンボアーズの別荘を建設した。

この頃ダ・ヴィンチは洪水と終末の絵を描いている。ミケランジェロも天井画に「ノアの洪水」を描いたが、その頃終末論が出ていたようである、終始我が道を行くのダ・ヴィンチが巷の思想に影響されたのはこれだけと言われている。しかし彼はその終末を科学的に解析しようとするのである。

ダ・ヴィンチは、万物を循環する水を世界の基本的なものと以前から考え、絵画を貫く思想としている。彼は終末を、雨や風、雷から起こるものと考えている。手稿にはその風景がかなりリアルに書かれている。どうやら審判の日を描こうとしたようだ、もちろんミケランジェロも描くのである。

1512年にミケランジェロは天井画を完成したが、ユリウス2世は翌年亡くなってしまい、廟墓の計画は大幅に縮小された。レオ10世はラファエロを寵愛して、ミケランジェロはフィレンツェに行かされ、メディチ家礼拝堂を建設することになる。ルネサンスの理想はどこに行ったのか、ミケランジェロの作品にも憂鬱や戸惑いが表れてくる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。