イーモラ・フォルリを制圧したチェーザレは、ローマにカエサル流の凱旋をした。自分は現在のカエサルであるという強烈すぎる欲望が覗かれる。父教皇は、正式に息子を教皇軍司令官に任命し、征服地を領地と認めた。キリスト教でありながらカエサルという点が、古代とキリスト教と統一しようとしたルネサンス人なのである。
そして7月、妹ルクレツィアの夫であったナポリ公が暗殺された。この首謀者として皆チェーザレの仕業と噂した。その頃ナポリは、かなりの程度アラゴンの支配下にあった。ミラノの次に倣うルイ12世を考えると、縁戚は切っておいたほうがいい。しかしいきなり暗殺とは誰も考えないだろう。
チェーザレが悪役とされる理由は暗殺を多用した点である。この点は日本で擬えられる信長とはかなり違う。むしろ「早すぎた信長」と言われる足利義教のほうがよく似ていると思う。さらに信長と違って自前の軍がない。そこでフランスの機嫌をとって兵を貸してもらわねばならない。
チェーザレは、フランスのナポリ攻略に従軍するという条件で、またフランスから兵を貸してもらった。しかしルイ12世はあくまで優雅というか、手を汚さずに、スペイン王家と直接交渉して、ナポリ王国の分割で合意した。金は12人の枢機卿を新たに任命して集めた。つなりは売官というやつである。
実は何とルクレッツィアを主人公にしたドニゼッティのオペラがあるがやっぱり愛憎グダグダ
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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