オルレアンの少女42-聖女を焼き殺してしまった!

5月30日、いよいよジャンヌの火刑の準備が終了し、火刑台にかけられることとなった。記録によれば英軍兵士800人が集まったとあるが、誇張とされている。しかしアニメなどと違い、一般人はジャンヌを助けるかもしれないので遠ざけられていた、というのが事実、実際奪還作戦もあった。

ジャンヌの敬虔な祈りの途中で「どうしたここまで晩飯まで食わせる気か」と、英軍兵士がせっつき、火刑台へとひっぱりあげられた。ジャンヌが「十字架を」と言うので、敬虔な英軍兵士が、木をつないで十字架をつくって渡し、彼女は胸に抱いた。教会の者は教会から十字架を出してきて、彼女の前に見えるようにした。

火がついた。ジャンヌは炎の中で、「イエス様」と何回も叫んだ。特に息絶える瞬間の叫びは皆に聞こえ、審判した判事さえも涙を流すほどだったと証言されている。その姿は皆に疑問と怖れを抱かせるに十分だった。

処刑終了後、ジャンヌをことの他憎んでいた英軍兵士は「あの子は聖女だった、白い鳩が飛び立っていくのを見た」と告解した。死刑執行人は「地獄におちるのではないか」と神父に告白した。英国王秘書でさえ「もう駄目だ、我々は聖女を焼き殺してしまった」と悲痛に涙した。ジャンヌの心臓はどんなことをしても燃えず、そのままセーヌに流したと伝えられる。マタイによる福音書には、イエスの処刑を行った百人隊長が最後に「本当にこの人は神の子だった」と言ったと記されている。

下は1999年のフランス版ジャンヌ・ダルクの火刑シーン。音楽を変えているのが残念だが、処刑場の混乱や奪還作戦、そして最後の天に召されるシーンがうまく描かれている

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キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。